猛暑もやわらぐ冷却効果!?
夏にも歌われる「冬うた」ってどんな曲?

2023.08.22
こんにちは、カラオケ好きの音楽評論家のスージー鈴木です。いやぁですね。夏真っ盛りです。しかし、「カラオケチャート研究所」は、今回あえて「冬うた」に着目します。夏にも歌われる「冬うた」は何? ってか、そもそも「冬うた」って、夏にも歌われているの? ……という「夏の冬うた」分析をしながら、ちょっとだけでも気温を下げてみたいと思います。
        • 「夏の冬うた」とは?

        • カラオケで夏にも歌われる「冬うた」、つまり「夏の冬うた」なんてあるのでしょうか? あるとしたらどの「冬うた」なのでしょうか? 確かめてみたくなった私は、「夏の冬うた」カラオケランキング分析をしてみました。

        • 具体的な分析方法について。まず対象データは2013年から2022年、つまり去年までの10年、それぞれにおける7月~8月計のDAMカラオケランキングベスト100。その中で冬ワード=「冬」「雪」「寒」「クリスマス」がタイトルに入った曲を検索していくのです。

        • 具体的に見ていきます。以下の楽曲ランキングは、対象データの中にランクインした回数(つまり年数)で測ります。では早速!

        • 「夏の冬うた」3位:中島美嘉『雪の華』

        • 2019年・2020年・2021年の3回(年)、ランクインしています。順位はそれぞれ55位、61位、85位。

        • リリースはもう20年前の2003年なのですが、そこから長く親しまれ、カバーもかなり多いようです。実は、この曲が主題歌となった同名映画『雪の華』が2019年に公開されており、その影響もあったのか、この年から3年連続、夏にもランクイン。

        • 歌のポイントは何といってもサビに入ったところの高音部分。音を確かめたら、上のレ#(D#)の音。女性の裏声としてもかなり高い音で、あそこを裏声でビブラート効かせて、まさに雪に震えるように歌うと、夏のカラオケ=「夏カラ」での冷却効果は抜群と思われます。ぜひお試しください。

        • 「夏の冬うた」同率3位:back number『クリスマスソング』

        • 同率3位がback numberの『クリスマスソング』。2016年・2017年・2019の3回ランクイン。順位はそれぞれ、43位、91位、88位。

        • どうも「夏の冬うた」の特徴は、サビの高音のようです。この曲もサビの途中で一瞬、上のド#(C#)という高音裏声が出てくるのですが、あそこをスッと歌うことが「夏カラ」冷却効果につながることでしょう。

        • こちらは2015年のリリース。歌詞に注目すると、クリスマスの騒々しさを嫌っている内容。だから冬を嫌って夏にも歌われているのかも?

        • 「夏の冬うた」2位:レミオロメン『粉雪』と次点は?

        • これは来るだろうと予測した人も多かったかもしれません。2013年・2014年・2016年・2019年の4回ランクイン。順位はそれぞれ、82位、73位、86位、94位。

        • 2005年のリリースですが、こちらも長く親しまれ、そして冬だけでなく夏にも歌われて続けています。カバーも多く、3位に輝いた『雪の華』の中島美嘉も歌っています(こちらも、なかなかの冷却効果でした)。

        • 歌のポイントは、こちらも言うまでもなく、サビで炸裂する上のラ(A)の高音。でも、この曲は『雪の華』のような裏声ではなく、地声で行きたいですね。男性が地声で歌うには、かなりの高音ですが。

        • でも、がんばって高音地声で歌うのはいいけれど、がんばり過ぎて汗かいて、室温はさらに上がっちゃうかも。ほどほどに。

        • ちなみにトップ3に続く4位はイルカ『なごり雪』。2014年・2016年の2回ランクイン。実はこの曲、歌詞をよく読んだら春の歌、つまり「夏の春うた」なのですが、まぁいいでしょう。こちらは何と1975年リリース。今年で48年目となる超スタンダードなのでした。

        • そして1位は……やはり、あの曲!

        • さぁ、お待ちかねの1位です。この曲は驚くなかれ、2013年から10年間、ずーっと100位以内をキープしてきた、まさにキング・オブ「夏の冬うた」なのでした。

        • ――石川さゆり『津軽海峡・冬景色』

        • 順位の変遷です。恐るべき持久力を持って、夏にも歌われ続けています。特に驚くべきは2017年。なんと38位の高水準。夏なのに「冬景色」が歌われまくったのです。

        • そしてこの曲の歌い方のポイントもまた、サビの高音。上のCの音をビブラートで悲しげに震わせて、真夏のカラオケルームを「津軽海峡・冬景色」にしちゃってください。ぶるるっ。

        • というわけで、「夏の冬うた」分析、いかがだったでしょうか。この冬には逆に「冬の夏うた」を分析したいと思います。お楽しみに。

執筆者Profile

音楽評論家スージー 鈴木

1966年、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。昭和歌謡から最新ヒット曲までその守備範囲は広く、様々なメディアで執筆中。ラジオDJ、小説家としても活動。