デビューして45年。
サザンオールスターズが歌ってきた「故郷・茅ヶ崎」。
サザンが歌う故郷への想いに、なぜ私たちは心を動かされるのだろう?

2023.09.19
さまざまな挑戦や困難と向き合いながら生きていく中で、ふと、地元で過ごした日々や、あの頃の景色が懐かしくなってしまう――。そんな時、故郷について歌った曲を聴いたり、歌ったりすることで、元気が出てくることがありますよね。
そこで今回は、今年デビュー45周年を迎えたサザンオールスターズに注目。日本中の人々の人生を彩ってきた数々の名曲たちを世に送り出してきたサザンが、折に触れて歌ってきた“故郷・茅ヶ崎”。フロントマン・桑田佳祐の出身地である「ふるさと」と、長年にわたる活動の中でどのように向き合ってきたのか、どんな想いを込めてきたのかを辿り、故郷の歌に秘められた“歌のチカラ”を紐解いてみましょう。
        • みんなが歌ってきたサザンの名曲たちに込められた、故郷への想いとは?

        • 故郷について歌った曲は世界中で生まれ、愛されてきました。日本にもさまざまな故郷を歌った名曲がありますが、「故郷を歌う日本人ミュージシャン」と聞くと、きっと多くの方が<砂まじりの茅ヶ崎>でお馴染みのサザンオールスターズを連想するのではないでしょうか。

        • まずは、過去30年間で、最もよく歌われてきたサザンオールスターズの楽曲ランキングを見てみましょう。

        • この中で、故郷・茅ヶ崎のキーワードが登場する楽曲は「HOTEL PACIFIC」、「希望の轍」、「勝手にシンドバッド」、「チャコの海岸物語」の4曲。これらの楽曲を中心に、サザンがどのように故郷を歌ってきたのかを紐解いてみましょう。

        • まずはデビュー曲の「勝手にシンドバッド」(1978年)から。冒頭で引用した<砂まじりの茅ヶ崎>というフレーズを皮切りに、ひと夏の淡い恋に翻弄される男性の姿が歌声・演奏ともに強烈なテンションで描かれていきます。発売から45年が経った今でも、そのエネルギーに圧倒されますね。この曲のキーワードとなる茅ヶ崎は、まさにそんな若さゆえの勢いが炸裂する、青春の日々を過ごす場。“故郷”というよりも“地元”の象徴として描かれているように感じられます。

        • 一方、「希望の轍」(1990年)では、今にも感情が溢れ出しそうな声で歌い上げられる<遠く遠く 離れゆくエボシライン>というフレーズに象徴されるように、過去から未来へと向かう分岐点の象徴として故郷が描かれています。過ぎゆく街の景色や聞こえてくる波の音に(「勝手にシンドバッド」で描かれたような)若き青春の日々を思い出しながら、こみ上げる想いとともに力強く明日へと向かう姿に、上京した日や一人暮らしを始めた日の自分自身を重ねた人も多いのではないでしょうか。

        • 若さを謳歌する場所であり、未来のために旅立つ場所でもある――。サザンの代表曲でもある2つの“故郷の歌”からは、それぞれのタイミングにおける故郷との向き合い方や、そこにある想いを感じることができます。

        • 45年という時間の中で、
          サザンは変わりゆく故郷、そして自分自身とどう向き合ってきたのか?

        • 生まれ育った場所は、やがて “地元”から “故郷”となり、その景色や過ごした日々は年月を重ねるごとに遠く、取り返すことのできないものとなっていきます。きっと、多くの方が「もうあの頃は戻ってこない」という想いを抱いたことがあることでしょう。

        • 「勝手にシンドバッド」から約22年後、“故郷”への凱旋となる茅ヶ崎での野外ライブ(「茅ヶ崎ライブ」)を盛り上げるために制作されたという「HOTEL PACIFIC」(2000年)は、まさにそんな変化を象徴する楽曲です。一見すると、茅ヶ崎を舞台に繰り広げられる、燃え上がるような真夏の恋模様を描いたサザンらしい夏の曲ですが、<セピアの幻影(かげ)>、<蜃気楼>など随所に織り交ぜられた言葉は、それが幻にすぎないことを示しているのではないでしょうか。極めつけは、<さらば青春の舞台(ステージ)よ>というフレーズ。「もうあの頃は戻ってこない」と気づいていながら、それでも“あの頃のエネルギー”を求めてしまう――。そんなリアルで切ない感情を実際に茅ヶ崎に存在していた「パシフィック・ホテル」に重ねて描いた“故郷の歌”となっていると言えるのではないでしょうか?

        • また、「HOTEL PACIFIC」の後半で歌われる<今でも忘れない>という言葉と、楽曲の最後を飾る<So I Love You…>のメッセージ。サザンの“故郷の歌”は、故郷を舞台とした物語から、故郷への感謝を伝えるものへと変わっていくように捉えることもできます。

        • 2014年にリリースされた「東京VICTORY」は、過ぎ去っていった時間と遠く離れた故郷に想いを馳せる気持ちと、だからこそ自分の人生を力強く生きようという意志を感じる力強い名曲です。長年に渡って“故郷の歌”を届けてくれたサザンが改めて歌う“故郷への想い”に、多くの人々が力をもらったのではないでしょうか。

        • “故郷の歌”は、私たちに自分自身を見つめ直し
          前へと進むためのチカラを与えてくれる

        • “故郷の歌”は、私たちが生まれ育った場所の景色だけではなく、かつて抱いていた想いや、エネルギーをも蘇らせてくれます。それは、単なるノスタルジーではなく、前へと進むためのチカラになる。だからこそ、私たちは“故郷の歌”が好きなのではないでしょうか。

        • そんなたくさんの“故郷の歌”を届けてくれたサザンオールスターズの最新曲「歌えニッポンの空」は、まさに<ここが故郷(ふるさと) 歌え日本の空>と歌う、せつなくも陽気な夏ソング。すべての故郷への愛と感謝が込められた楽曲となっています。そして、DAM「Singing」2023 Special Project CMソング「盆ギリ恋歌」は、サザンらしいユーモアと色気に満ちた、最高にノリの良い夏祭りソング。その歌の中にも、現在のサザンらしい故郷への想いがたくさん詰まっています。

        • さらに、9〜10月にはサザンにとって10年ぶりとなる“故郷・茅ヶ崎”での野外ライブ、「茅ヶ崎ライブ2023」も開催予定!9月30日、10月1日の公演は、全国の映画館へライブ・ビューイングも行われるとのこと。今年の夏の終わりに、日本人にとっての“心のふるさと”でもあるサザンと、素敵な思い出を作ってみてはいかがでしょうか?