寒さを吹き飛ばす暑くて熱い歌~冬にも歌われる「夏うた」ってどんな曲?

2024.01.09
こんにちは、カラオケ好きの音楽評論家、スージー鈴木です。少々遅くなりましたが、「カラオケチャート研究所」、本年もよろしくお願いします。寒い冬が続きますので、気分だけでもホットにということで、今回は「夏うた」に着目します。「冬にも歌われる夏うた」のベスト5を一気にご紹介。気分だけでもあったまってください。
        • 「冬の夏うた」とは?

        • 今回は前回よりも緻密な分析を試みました。用いたのは、この10年間(2013年~2022年)の冬(12~2月)のDAMカラオケランキング。前回「夏にも歌われる冬うた」分析は100位まででしたが、今回は500位までくまなくチェックしました。

        • 500位までの中で、タイトルに「夏」という文字が使われている楽曲=「冬の夏うた」を抽出。その順位を得点化し(ex.1位=500点~500位=1点)、抽出された曲ごとに得点を集計、10年間の「冬の夏うたポイント」を算出。

        • ここではそのベスト5を発表します。5曲とも1990年~2000年リリースの曲でした。90年代、つまりカラオケやCD、タイアップなどと絡み合いながら「J-POP」という言葉が一気に普及した、熱くて暑い10年間の曲ばかり。では早速。

        • 5位:松任谷由実『真夏の夜の夢』/1340点(冬の夏うたポイント)

        • 1993年にリリースされ、ドラマ主題歌としてミリオンセラーとなった松任谷由実の1曲です。2021年を除いて、2013年から2022年の冬、ずっと500位圏内に入っています。ユーミンには珍しいハードなラテンサウンドが、まさに真夏という感じの印象を高める1曲です。

        • ここでクイズです(主に50代向け)。この曲が主題歌となったドラマのタイトルは何でしょうか? 案外難しいのです。正答率はたぶん3割くらいかな(ヒント:「冬彦さん」が大ブームとなったシリーズの前作と混同しないように)。

        • 4位:Whiteberry『夏祭り』/1555点

        • 2000年リリースのヒット曲です。「冬の夏うたポイント」は1500点を超えました。2013年から2022年まで10年連続で500位圏内にランクインしています。

        • タイトルからして一応「夏うた」ですが、5人組ガールズバンドだったWhiteberryは北海道北見市出身。だから「夏うた」といっても、寒い北海道のイメージがくっついていて、だからこそ冬に歌われるのかもしれません。

        • ちなみに北見市といえば、最近では女子カーリング・チーム「ロコ・ソラーレ」の町として知られています。ロックとカーリング、ジャンルは違えど「北見市=日本屈指の女性が元気な町」というイメージが広がります。

        • カラオケの場でも、シンプルなメロディにアップテンポのリズムで、たいそう盛り上がりますので、寒い冬のカラオケには、実はもってこいかもしれません。

        • 3位:class『夏の日の1993』/1559点

        • Whiteberry『夏祭り』を僅差でかわして3位にランクイン。1993年リリースによるミリオンセラー。2013年から2019年まで、500位圏内にランクインしました。class(クラス)は津久井克行と日浦孝則の2人組(当時)。

        • こちらは当時、いわゆる「ハモカラ」=ハーモニーを楽しむカラオケ曲として歌われました。ただ個人的に、この曲のハモりはちょっと難しくて、上手く歌えなかった記憶があります。

        • 聴かせどころは曲中盤のハーモニー・パートです。あのパートを「♪ミファミファミファミー」「♪シドシドシドシー」という、専門用語でいう4度でビシッと決めるとたいそう盛り上がります。

        • でも、『真夏の夜の夢』というこの曲といい、なぜ「1993年の夏うた」が冬に歌われるのでしょう。実は1993年の夏は、記録的な冷夏なのでした。寒すぎてコメが不作になって「平成の米騒動」と騒がれた寒い寒い夏だったのです。そう、寒い夏の歌だから、冬に合う――のかも。

        • 2位:ゆず『夏色』/1741点

        • 1998年リリース、ゆずのメジャーデビューシングルです。「冬の夏うたポイント」は1700点超えと、3位以下を引き離しました。2020年以外のすべての年で500位圏内に入っています。

        • この曲も「ハモカラ」で支持されていると思われます。ただ『夏の日の1993』に比べて、全体的に自由奔放なハーモニーという感じがします。

        • 歌い出しから男性2人でリードボーカルを分け合って、途中から2人のパートが不思議に絡みだし、そしてサビに入ったら自由奔放なハーモニーが炸裂。エンディングのハモリもとっても気持ちいい。私も当時、さんざん歌ったものでした。

        • 1998年の夏といえば、横浜出身のゆずが盛り上がり、松坂大輔の横浜高校が甲子園を制覇、さらに横浜ベイスターズが38年ぶりの日本一に向かっていた、つまり、横浜が異常に熱かった夏でした。というわけで、もしかしたらこの曲、とりわけ冬の横浜方面で歌われている、のかも。

        • さて、ここで6位以下を見てみましょう。こんな感じです。なお『春夏秋冬』というタイトルの曲が多数ランクインしていたのですが(Hilcrhyme、EXILEほか)、企画の趣旨とは異なると思われましたので、今回は省きました。ご容赦くださいませ。

        • 6位:Mrs. GREEN APPLE『青と夏』/1245点
          7位:家入レオ『君がくれた夏』/780点
          8位:J-WALK『何も言えなくて…夏』/499点
          9位:井上陽水・安全地帯『夏の終りのハーモニー』/76点
          10位:島津亜矢『夏つばき』/32点

        • そして1位は……あの曲!

        • ではいよいよ「冬の夏うた」ランキング、堂々の1位の発表です。

        • 1位:サザンオールスターズ『真夏の果実』/1857点

        • 2位のゆず『夏色』を100点以上引き離した1位です。もちろん2013年から2022年まて、すべての年の冬にランクイン。さらに順位も100~200位台で推移していますから、かなりの人気といっていいでしょう。

        • 34年前となる1990年のリリース。もちろんこれだけ広く長く歌われているのですから、まずはメロディが素晴らしいのですが、さらなる魅力のポイントはイントロにあると考えます。

        • 遠い夏の思い出を感じさせるような、切ない切ない切なすぎるあのイントロ。あのイントロを聴くだけで、1990年の夏を思い出す方も多いのではないでしょうか。

        • でも1993年と違って、1990年の夏は猛暑でして、冬に歌うにはそぐわない感じもあるのですが、それでも冬に歌われる理由は、歌詞に「マイナス100度」という言葉があるからかも。これはもう北海道北見市を超える寒さです。

        • というわけで、「冬の夏うた」は、暑くて熱い夏を歌いながらどこか切ない曲が多いような気がします。みなさんも「冬の夏うた」を歌って寒さを吹き飛ばしながら、遠い夏を思い出して、ちょっとだけ切なくなるのもいいかもしれません。

執筆者Profile

音楽評論家スージー 鈴木

1966年、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。昭和歌謡から最新ヒット曲までその守備範囲は広く、様々なメディアで執筆中。ラジオDJ、小説家としても活動。