早速、2023年上半期DAMカラオケランキングのベストテンを見てみましょう。
まずは、強い。強過ぎる。優里『ドライフラワー』ががっちり首位をキープ。この曲、2021年・2022年の年間ランキングでも首位だったので、今年も首位で走り切るのか、いやこれから何年独走するのかが見ものという感じです。
さて突然ですが、ここで、TwitterのDAM公式アカウントが募集した「大予想!
2023年上半期カラオケランキングNo.1ソングは?」の予想ランキングを発表します。
1位:YOASOBI『アイドル』:475票
2位:Vaundy『怪獣の花唄』:96票
3位:優里『ドライフラワー』:38票
※出典元:DAM公式アカウント
https://twitter.com/DAMch_Official/status/1664074482200477696?cxt=HHwWgIDQ9Zi7_ZcuAAAA
上半期1位の『ドライフラワー』がTwitter予想では3位で、上半期2位の『怪獣の花唄』はTwitter予想でも2位と的中したのですが、それを越えて圧倒的な1位予想を獲得したのはYOASOBI『アイドル』。
実は『アイドル』、今のところベストテンには入っていません(49位)。今年の4月リリースなので、爆発的にヒットしていても、さすがに上半期のベストテンに駆け込むのは難しかったかもしれません。下半期、どこまで躍進するかが楽しみと言えるでしょう。
上半期ランキングに戻ると、大躍進『怪獣の花唄』の影響で、2022年の年間ランキング2位だったSaucy Dog『シンデレラボーイ』が3位に後退。同じく昨年の年間ランキングで3位だったあいみょん『マリーゴールド』と、4位だったback number『水平線』が、それぞれ4位、7位に後退しました。
さてここで、注目すべきは、90年代にリリースされた楽曲が目立っていることです。
例えば、1995年リリースの高橋洋子『残酷な天使のテーゼ』が8位をキープし、2000年のポルノグラフィティ『サウダージ』が大躍進。さらに11~20位を見れば、椎名林檎『丸の内サディスティック』(99年)、スピッツ『チェリー』(96年)、宇多田ヒカル『First Love』(99年)という、90年代(+00年)の楽曲が上昇軌道に乗っています。
それぞれ、TikTokでバズったり、あとは『丸の内サディスティック』のコード進行が流行ったり(略して通称「丸サ進行」の曲が最近とても多い)、『First Love』のようにドラマで使われたりなど、各曲固有の背景があるにはあります。
ただ、それ以上に私が思うのは、「とにかく新曲を誰よりも早く歌いたい!」というより、もしかしたら「90年代を歌いたい!」というニーズが高まっているのではないかということです。
90年代、日本の音楽市場が爆発し、短冊型の8cmシングルCDと、ドラマやCMの派手なタイアップ、街にはCDメガストアが立ち並び、そしてカラオケルームが浸透していく中で、買われて・聴かれて・歌われた、あの時代のキラキラと輝いていたサウンドへの志向が、コロナ禍の余韻が続く中で求められたのではないでしょうか。
音楽市場が今よりももっともっと大きかった時代が生み出した、輝きと勢いのある音楽。そして市場がピークとなった1998年にデビューした、宇多田ヒカル、椎名林檎、そして、aikoらの新しい才能が、その輝きと勢いに、さらに拍車をかける――。
「平成レトロ」という言葉を、最近よく耳にします。さらには「Y2Kファッション」(「Y2K」=Year2000。つまり2000年の意味)という言葉も。そして、それらムーブメントを支えているのが、一般に90年代後半以降に生まれた「Z世代」だと言われます。
もちろん、自分の知らない時代のカルチャーを、単に面白がっている側面もあるのでしょうが、それ以上に、輝きと勢いのある時代への憧れが強いような気がします。そして、そんなカルチャーの代表が、当時の音楽、つまり令和の時代に新しい感覚で受け入れられている「シン・90年代ソング」だと思うのです。
この流れは、今後も続いていくと思います。今年の年間ランキングにどれだけ「シン・90年代ソング」が入るのか。はたまた、今年リリースのYOASOBI『アイドル』が。一気に首位に躍り出るのか。楽しみです。