赤ちゃんは人生経験がほとんどないため、周囲のさまざまな音に対してとても敏感です。生まれて初めて見たり、聞いたりするものに対して興味を示す反射を「定位反射」と呼びますが、これを利用し、赤ちゃんが好むような効果音を聞かせたり、音楽も構成を頻繁に変えて反射を促すことによって、泣いている原因を忘れさせてしまう。これが、特定の歌や音を機聞くことで、赤ちゃんが泣き止むメカニズムです。
人は、お母さんのお腹にいる妊娠4か月頃から、音を聞き取る器官が形成されます。そのため、妊娠中から胎教として音楽を聴かせることは有効とされています。ただ、聴覚器官自体が大人と比べて小さいため、良く聞こえる周波数が高いものに偏るという特性があります。
生後すぐでは、メロディよりも不思議な音などに興味をもちますが、発達の度合いによって、学習した内容に影響されることが多くなります。月齢が進むとともに、アニメのキャラクターなどの影響を受けやすくなっていきます。
たとえばレジ袋をすり合わせたときのカサカサ音や、ドライヤーのガーッという機械音、掃除機をかける音などがそうですね。これらの音は周波数が高いため、赤ちゃんの耳が聞き取りやすいといわれています。ただし、単調に続くとやがて飽きてしまうので、気を引き続けるためには音の出し方に強弱をつけるなど、ひと工夫が必要です。あとは、動物の鳴き声にも高い効果が見られますね。
作曲家や作詞家の方々がご自身の経験に基づいて作られた歌には、効果が高いものが多いと思います。とはいえ、この曲を聞いたらこういう行動を取ったという経験則によるものですので、すべての要素が効果的であるとは言い切れません。また、大人向けの音楽であっても、それまでに触れたことのないような音が入っているもの。たとえば、打楽器などの効果音などは非常に効果があるんですよ。
CMの楽曲は主に大人が15秒や30秒の間に注意を向けるように作られていますので、赤ちゃんも同様に反応しやすいといえます。短時間の間に注意を引きつける要素が満載なCMソングには、「赤ちゃんが泣き止むCM」と言われるものも多くあるんですよ。
人間は、外界から来る歌のリズムやテンポに、体内リズムを合わせようとする傾向があります。そのため、活動的な時にはアップテンポ、ゆったりとしている時にはスローテンポのものを好むんですね。しかし、赤ちゃんは大人よりも心拍数が速いので、全体的に大人より早めのリズムを好む傾向があります。
赤ちゃんは本能的にお母さんの声を好むので、泣き止ませにも効果があります。歌い方ですが、泣いている赤ちゃんは口元で大音量を発していますから、小さい声では注意を引くことができない場合も。しっかりとした発声で、歌詞やリズムなどに緩急をつけて、ちょっと演技過剰かな? と思うくらい表情豊かに歌うと良いでしょう。その際に、唇を震わせて「ブルブル~」とか「ブー」といった破裂音の混じった効果音を加えると、さらに注目度が上がりますよ。
最近では、動画配信サイトやサブスクサービスなど、音楽を気軽に楽しめる環境が充実しています。パパやママが好きな歌手の歌を聴くことから始めて、その後は同じジャンルや同じ年代などのプレイリスト、そして他のジャンルの楽曲へと広げていき、赤ちゃんの反応を見ると面白いと思います。子どもだからこういう歌、と決めつけないで、大人も一緒にいろんなジャンルの歌を楽しむつもりで聴かせると、親子の共通体験を通した思い出づくりにもつながって一石二鳥ではないでしょうか。楽曲に合わせて一緒に歌うことで、気分転換にもなりますよ。育児のお供にぜひ取り入れてみてください。
コミュニケーションの手段として使われ、発達してきた“声”ですが、情報伝達に加えて、さまざまな感情を相手に伝える際のもっとも簡単で確実な方法が「歌」だと思っています。野球やサッカーの試合観戦中に、応援歌でプレッシャーをかけてホームチームを有利に導いた時などには、「歌のチカラ」を大いに感じますね。
自身の感情を増幅する効果があるのも「歌のチカラ」。悲しい時、楽しい時などにその気持ちに合った歌を聴くと、感情が増幅され、歌とともに記憶に残るのは素晴らしいことだと感じています。「Singing 歌いながらいこう」は、とても良い活動だと思います。