コロナ禍の中、静まり返る夜の街を見て「少しでも街を明るくしたい」という思いからでした。自分も好きで元気をもらえる「昭和歌謡」をテーマにした飲食店をオープンすれば、当時をよく知る方はもちろん、そのお子さんやお孫さんなど幅広い世代が楽しんでくれるのではと考えたのです。歌は、人の心を癒し、成長させてくれますからね。
意外だったのですが、21歳~30代までの若年層が5割を占めています。いわゆる昭和歌謡のドンピシャ世代である60歳以上は1割、2000年以前の名曲を楽しんできた40代から50代のお客さまは4割ほどです。
数年前から、海外アーティストが昭和歌謡に注目し始めたことがきっかけだと思います。楽曲そのものの素晴らしさはもちろん、日本語詞の意味も簡単に知ることができ、歌全体の魅力に気付いた方が増えたのではないでしょうか。そういった海外からの逆輸入で、昭和歌謡の魅力がZ世代にまで届いたことが要因だと感じます。
また、コロナ禍によって自分の好きな音楽に没頭できたという環境的な要因もあるかもしれません。外出もままならない中、インターネットを通して未知の楽曲に出会い、その魅力にハマる方が多かったのではないでしょうか。
お客さまからは「歌詞が心に響く」と、よく伺います。昭和歌謡の名曲は、歌詞を先に作り、後から楽曲をつけていることが多いんです。歌詞に込められた想いを理解した上で作曲された歌は、心に刺さりやすいのだと思います。20代のお客さまも、「自分の心境によって、歌詞が突然響いてくるんですよ」と仰っていましたね。また、若い世代はご両親が口ずさんでいたり、車で流れていたりと、知らず知らずのうちに昭和歌謡や平成の楽曲になじんでいて「懐かしいけど新しい」ところに惹かれているのかもしれません。
50代以上の方は、ご自身の若かりし頃の曲を歌うことで活力を取り戻したい。今後の人生も元気に歩みたいという思いもあるようです。実際、お客さまと一緒に昭和歌謡を歌っていると、私自身も若い頃に抱いていた希望や後悔などを思い出し、青春時代に戻ったような気持ちになることがあります。
大きな夢ですが、全国に100店舗つくり、全世代が元気で豊かな暮らしを送るためのお手伝いをしたいです。昭和歌謡のアイドルやアーティストの育成、ファンクラブの結成までできたらいいですね。
続いて、『昭和歌謡居酒屋UFO』さんで「昭和歌謡ガイド」として活躍されている山口さんにもお話を伺います。
2018年に先代の幹事長が立ち上げたサークルで、レトロな歌や喫茶店が好きというメンバーが集まっています。早稲田大学にはサークルが多数存在しますが、幹事長が好きだった「昭和レトロ」にまつわるサークルは当時見当たらなかったので、自分で設立したそうです。設立当初は「昭和レトロ」を語り合う飲み会が中心でしたが、現在は、週に一度定例会を行い、月1ペースでレトロなスポットに行ったり電車巡りをしたりと、多岐にわたって活動しています。また、早稲田祭の出展は次第に豪華になり、2022年からは昭和時代にアイドルとして活躍された方をゲストとしてお招きしています。
昭和時代が舞台のアニメに登場した、当時の人気アイドルをYouTubeで調べたことがきっかけです。それまでは1990年代後半以降のグループアイドルしか知らなかったので、すごく衝撃を受けました。その独特な雰囲気がカッコ良くて一気にハマってしまいましたね。
楽器の存在を感じるアナログ感というか、温もりに惹かれているのだと思います。また、私の場合は聴きこむたびに「この人たちプロだ!」と圧倒されました。天才的な比喩表現がちりばめられた歌詞、きれいなメロディライン、アーティストの歌唱力や存在感が刺さってきます。たとえメジャー曲でなくても、歌詞、楽曲、歌唱すべてが完璧で、歌詞の情景が浮かんでくるのです。
友人に誘われて来店してみたら、楽しすぎて居ても立ってもいられず、お会計の時に「ここで働かせてください!」と志願しました。
お客さまが学生の頃の「喫茶店選びの際、店内にかかっている音楽が決め手になっていた」という話は興味深かったです。その方は、学生時代にレコードをレンタルして音楽を楽しんでいたそうですが、自宅のスピーカーの質があまり良くなかったそうで、好きな曲を良い音質で聴くために喫茶店に通ったそうです。思い出話を伺うと会話が弾み、お客さま同士の距離が縮まるので、スタッフとしてもうれしいです。
まずは、昭和歌謡に詳しくない人にも「面白そうだな」と思っていただけるよう、昭和歌謡を趣味として思いきり楽しんでいきたいです。また、サークルの活動をSNS等で発信し、レトロに興味のある方々との交流を生み出したり、たくさんの方に昭和の魅力を伝えたいです。