最近、ニュースなどで誤嚥性肺炎という病気を見聞きする機会が増えていると思いますが、どんな病気なのか今ひとつ理解できていない人も多いのではないでしょうか?
みなさんも食べ物や飲み物が変な所に入ってむせた経験があると思いますが、誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまう「誤嚥」が原因で発症する肺炎のことで、細菌を体内に取り込んでしまって感染を起こす感染症の一種です。食べ物などの飲み込みに関係する機能が低下する嚥下機能障害が原因です。高齢者の中には「まだ自分の歯が残っていて、しっかり食べ物を噛めるから大丈夫」と自信を持たれている方がいますが、歯は咀嚼に必要なのであって「嚥下(飲み込む)」する力とは別の話。咀嚼はできるけれど、飲み込む力(嚥下機能)が弱い人が多くいるため誤嚥性肺炎も増えているのです。このような口腔機能の低下は、老化のスピードを早め、全身的な健康を損なう原因になることも指摘されています。つまり、老化や誤嚥性肺炎の予防には、“喉トレ”によって飲み込む力を鍛えることが最良の対策になるのです。
鶴見大学歯学部 斎藤一郎教授の研究によると、「歌う」ことには喉を鍛えるメリットだけではなく、体に及ぼす良い影響がたくさんあり、医学・科学的に実証されています。その一例をご紹介します。
1. 唾液分泌量の促進*1
「歌う前」と「歌った後」の唾液量を調べたところ、「歌った後」の方が明らかに唾液の量が増えていることがわかりました。唾液には食べ物の消化を助ける働きのほかに、口腔内の細菌の繁殖を抑える効果もあります。「歌う」ことで口のまわりの筋肉が使われ、その筋肉が唾液腺を刺激して唾液の分泌量が促進されることが実証されています。カラオケを「歌う前」と「歌った後」の唾液分泌量を比較した結果、「歌った後」の方が統計学的に有意に唾液量が増えていることがわかりました。「歌う」ことで口のまわりにある唾液腺が刺激されたことで、唾液の分泌量が促進されたのです。
2. 嚥下機能をアップ*2
誤嚥性肺炎の予防に直結する嚥下機能ですが、被験者にカラオケを週4回、8週間継続して行ってもらったところ、嚥下能力に加え、ものを噛み砕く「咬合力」の向上も見られました。喉も筋肉でできているので、何歳になっても適切な筋肉トレーニングを行えば、筋力は向上します。つまり、「歌う」ことで喉の筋肉が鍛えられて嚥下能力がアップしたと考えられるのです。カラオケで週に4回、「歌う」ことが嚥下機能にどのような影響を与えるかを調べました。
その結果、開始から4週間後、8週間後と嚥下機能がどんどん高まっていきました。また、同じように咬合力の増強も見られますが、これは「歌う」ことで口のまわりの筋肉が強化された結果だと考えられます。
カラオケへ行って好きな曲を大きな声で歌った後は、楽しい気分になる、気分がスッキリするなどストレス解消になりますよね。
でも、「歌う」ことのメリットはメンタル面だけではなく、喉が鍛えられることで誤嚥性肺炎の予防につながり、さらには免疫力もアップさせるなんて、良いこと尽くし! 友人たちと一緒に行える、楽しく気軽な健康法の一つとして、もっと歌を楽しんでみてはいかがでしょうか。