採点開発者突撃インタビュー!Vol.2 精密採点II編【後編】
カラオケを楽しみたい人から、歌唱の上達を目指す人まで、多くのユーザーに親しまれている採点ゲーム。
前回の採点開発者突撃インタビュー「採点ゲーム誕生編」では、採点ゲームの誕生から2003年リリースの初代「精密採点」誕生までの軌跡を、採点ゲームの企画・開発を手掛ける橘 聡氏と、精密採点Ai開発チーム所属の矢吹 豪氏に語ってもらった。
第2回となる今回は、『ビブラートの上手さ』や『見えるガイドメロディー』などの画期的なアイデアでさらなるヒットへ導いた『精密採点II』にフォーカスを当て、話を聞いた。(前後編の後編。前編を読む)
プロフィール
橘 聡
矢吹 豪
思い切った『見えるガイドメロディー』の導入が、新たなインパクトに
橘:精密採点IIには大きな革命があって、それが歌唱中に表示される『見えるガイドメロディー』なんですね。当時はユーザーのウケもよく、世の中的にもインパクトは大きかったと思います。
──今では欠かせない機能となっていますが、確かに初めて見た時はインパクトがありましたね。
橘: 見えるガイドメロディーは楽譜のような見た目ですが、正しい音程で歌えているのかをリアルタイムで確認できるようになっています。ここは音を上げる・下げるといったメロディーが視覚的に表示されるので、昔歌っていたけど最近歌わなくなってしまったという楽曲でも歌いやすくなる、というメリットもありますね。
──楽譜の役割があるということですね。
矢吹:直感的にわかるので、慣れると楽譜より見やすいと思いますよ。
橘:ただ、見えるガイドメロディーは社内で許可を取るのも大変でしたし、世の中に出すのにも相当な勇気がいりました。採点の基準となる『採点リファレンス』というものがDAMに配信されているのですが、見えるガイドメロディーは、その採点リファレンスを見せて、答えを見せているようなもの。もし合っていなかったら採点リファレンスが間違っていると公開しているようなものなんです。
矢吹:問い合わせが増えることも、もちろん予想されました。音楽教室の先生など精密採点を使ってレッスンをしている方もいるので、この楽曲のここが間違っているといった指摘や、この音を直してほしいといった問い合わせが来るだろうな、と。
橘:採点リファレンスは楽譜に近いものがありますが、実際の楽曲のメロディーと楽譜が同じかというと、楽譜にはわかりやすく伝えるという役目もあるので、完全に同じではないんですよね。
矢吹:僕は2000年から着メロの制作もしていたのですが、それと似ていますね。実際の楽曲と着メロで差異があると、作曲家の方から直接ご指摘をいただいたこともありましたし。難しいところですよね。
橘:そういったところも社内で話し合いつつ、間違ったところを見つけたらすぐに直して、クオリティを上げていこうと進めてきました。
──企画や開発だけでなく、そういった細かな対応も成功へとつながった理由なんですね。
苦労を乗り越えたからこそ得られた、正統派採点ゲームとしての反響
——精密採点IIをリリースした反応はいかがでしたか?
橘:見えるガイドメロディーで音程の正確性がわかるので、テレビでもそれを視聴者に見せれば納得のいくところがあり、メディア側も使いやすかったという話はありましたね。
矢吹:取材の依頼も増えた時期で、画面を見ていただくと「楽譜みたいなのが出ている!」って、みんな驚くんですよ。それで実際に歌ってもらうと音が合っていれば色がぬられるし、はずしていると色がぬられないので、「すごい、ちゃんとわかっている!」といった反応があって。それがすごく嬉しかったですね。
──90年代から比べたら、かなりの進歩ですよね。初代精密採点で拾いきれなかった「歌の上手い人への評価ができている」という実感はありました?
矢吹:精密採点IIは、初代精密採点よりも採点を厳しくしているんですね。世の中的には、ちょっと採点が厳しすぎるという意見もありましたが、それくらいちゃんとした評価を入れ込んでみたわけです。実際、音程が大きく外れたりすると、最初はショックだと思うのですが、ショックを受けるというのは、歌の上達におけるスタート地点です。正統派の採点ゲームなので、なんとなく曖昧に歌っていた部分に気づいてほしいという想いもありました。
橘:ビブラートの上手さの検出と見えるガイドメロディーの導入で、カラオケボックスに通われる方が増えたという話は聞きましたね。
——それは嬉しい反応ですよね。
橘:この時くらいからですね、我々はお客さんと一緒に進化していくんだ、成長していくんだということを認識し始めたのは。見えるガイドメロディーで採点リファレンスを公開することで、お客さんと情報交換をしているような、不思議な感覚がありました。
ただ、精密採点IIでは実現できなかったことも多く、私たちとしてはまだ煮え切らない部分もありました。それが次の開発へとつながっていきます。
——と、ちょうどキリのいいところで字数が尽きてしまいました(笑) 次回は2010年にリリースされた『精密採点DX』の開発についてお伺いしたいと思います。本日はありがとうございました!
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