採点開発者突撃インタビュー!Vol.3 精密採点DX編【後編】
カラオケを楽しみたい人から、歌唱の上達を目指す人まで、多くのユーザーに親しまれている採点ゲーム。
前回の採点開発者突撃インタビュー「精密採点Ⅱ編」では、『ビブラートの上手さ』や『見えるガイドメロディー』などの画期的なアイデアでさらなるヒットへ導いた『精密採点Ⅱ』について、採点ゲームの企画・開発を手掛ける橘 聡氏と、精密採点Ai開発チーム所属の矢吹 豪氏に語ってもらった。
第3回となる今回は、精密採点が成熟期を迎える2010年リリースの『精密採点DX(デラックス)』にフォーカスを当て、話を聞いた。(前後編の後編。前編を読む)
プロフィール
橘 聡
矢吹 豪
上達のコツは自分に合ったキーで歌うこと!『声域』の活用法
橘:精密採点DXでは『声域(せいいき)』という項目も追加しています。声域は、歌われている方の発声できる音程の幅で、これをどうわかりやすく見せるのか考えた結果、ピアノの鍵盤を採用しました。その楽曲の音域と、歌唱で発声できた声域を表示するようにしています。
矢吹:楽曲の最高音や最低音を表示することで、選曲にも役立ちますよね。結果画面を見ることで、キー設定が合っているのかの参考にもなります。
橘:原曲キーにこだわって歌われる方が多いのですが、自分にあったキーで歌っていただき、その楽曲を自分のモノにしてもらいたいと思っていました。私が通っていたボイストレーニングでも、必ず自分に合ったキーで練習しています。
声域を見ていただくことで、この楽曲の最高音はラだけど自分には高くて出せないからキー設定を1つか2つ下げようとか、女性が男性アーティストの曲を歌う時は低い声域を見てキーを4つ上げようかな、といったように、コツをつかんでいただきたいと思います。カラオケならキー設定を簡単に変えられるので、ぜひ活用してほしいですね。
矢吹:実際のバンドの演奏で半音下げよう、上げようとなったらすごく大変ですし、カラオケならではですよね。みなさんよく高い声を出したくて、自分の声域より高いキーで練習をしてしまうのですが、それだと喉がしまって、ただただ声が細くなるんです。たとえ音程が届いたとしても歌声としては魅力のない声となります。
いきなり高いところからではなく、キーを下げて安定して歌えるところできっちり歌い込んでもらった方が、圧倒的に声が出しやすくなりますよ。1年後を楽しみに、一旦キーを下げて、そこで歌えるようになったら1個ずつ上げていった方がいいですね。
橘:それでも高音域の音程が届かずにズレてしまうようなら、分析レポートで「高い音程のフレーズの前にはしっかり息を吸いましょう」などと表示されるんですよ。アドバイスをもとに、ちゃんと息吸って歌ったら高域が出て「これだ!」とコツをつかんでいけると思います。
指標となる全国平均点を精密採点シリーズで初めて表示
——精密採点DXでは、全国平均点という項目も採用されています。
橘:自分で目標を立てて練習していても、実際にどれくらい点数を出したらいいのか、わからないですよね。そこで、簡単な判断基準や指標があった方がいいだろうということで、曲ごとの全国平均点を採点結果画面に出すようにしました。
矢吹:お客さんからの問い合わせでも、この曲の平均点は何点ですかという質問はありました。全国のユーザーが点数を競い合って、自分が全国で何位なのかわかる『ランキングバトル』という採点ゲームがあるのですが、精密採点でもこのランキングバトルのようなことをやりたいというのがありましたね。ユーザーからの反響もあって、テレビ番組でもその曲の全国平均が出るようになりました。
──全国平均点で自分の大体のポジションがわかり、さらにレーダーチャートや分析レポートで自分の強み・弱みを把握できる。歌を上達させるためのヒントをより意識的に提供し始めたのが精密採点DXなんですね。
橘:そうですね。ちなみに、レーダーチャートの中でも全国平均点を表示しています。青色がご自身の結果で、赤色が全国平均になっています。
矢吹:どこを強化すれば上達できるのか、レーダーチャートの全国平均を表示することによって、そのポイントがどこなのかを視覚的に伝えています。
──歌の上達について、細かなところまでこだわっているからこそ、ユーザーの満足度も高かったというわけですね。
ユーザーからは望んだ通りの反応!プロも信頼するより精密な採点へ
──精密採点DXの開発期間は、実質どのくらいだったのでしょうか?
橘:2008年から着手して、2年はかかっていますね。エンジン改良に着手する前のフェーズを含めれば、もう少し長くかかっていると思います。
──精密採点IIに続いて、精密採点DXもかなり反響があったと思いますが、印象に残っているエピソードはありますか?
矢吹:精密採点DXになってメディア露出もさらに増えましたし、SNSでも話題にあがっていましたね。
橘:テレビのカラオケ対決番組でも、それまでは99点や98点といった同じ点数に固まってしまうのが課題でしたが、精密採点DXでは点数を小数点第3位まで伸ばして表示するようにしています。それによってカラオケ企画ももっと盛り上がると思っていました。
矢吹:あとは各地でイベントも開催していましたね。精密採点DXの開発担当がカラオケレッスンをします、といった企画でオファーをいただきまして、1人ずつ歌ってもらって歌唱アドバイスをするのですが、これが好評でした。参加された方々から、本気で歌が上手くなりたい、どうしたらもっと歌が上手くなるのか、といったような質問をたくさんいただいて、僕自身も、とても楽しかったですね。
──初代精密採点の時は、単に点数を上げようとするゲーム攻略のような流れがあったけれど、精密採点Ⅱ、そして精密採点DXをリリースして、本当に歌を上達させたいというユーザーが増えてきた感じですね。
矢吹:ちゃんと歌が上手くなって、点数も取れるようになりたいという流れになりましたね。実際、上手い人がちゃんと高得点を出していましたし、歌手の方からも「精密採点DXでよく歌っています」といった言葉をいただきました。プロの方が納得してくれているんですよね。私たちにとっても自信になりましたし、いいものを開発できたなとも思えました。
──毎回のリリースごとによい反応があるイメージですが、精密採点DXはとくに思った通りの反響を得られたのでしょうか?
橘:そうですね。自分たちが望んでいたようないい反応をお客さんがしてくれて、素直に嬉しかったです。やっぱり、お客さんからの感謝の言葉が何より嬉しいですよね。研究意欲がより湧いてきますし、その維持力はとても長いです。
矢吹:リリース後はいつも緊張しますよね。どんな反応がくるかなって。お客さんの生の声もそうですし、問い合わせやSNSでの反応もそうですし。ただ、精密採点DXはいい意見がすごく多かったですね。それと、精密採点DXの開発や採点リファレンスの制作、プロモーションなど、関わった人たち全員で社長賞もいただきました!
──精密採点DXは、社内外でも評価が高かったということですね。次回はさらなる進化を遂げた2015年リリースの『精密採点DX-G』についてお話しをお伺いします。本日はありがとうございました!
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