採点開発者突撃インタビュー!Vol.4 精密採点DX-G編【後編】
カラオケを楽しみたい人から、歌唱の上達を目指す人まで、多くのユーザーに親しまれている採点ゲーム。前回の採点開発者突撃インタビュー「精密採点DX編」では、プロからも信頼されるほど採点が精密化され、分析レポートやレーダーチャートによってより直観的な評価が可能になった『精密採点DX(デラックス)』について、採点ゲームの企画・開発を手掛ける橘 聡氏と、精密採点Ai開発チーム所属の矢吹 豪氏に語ってもらった。
第4回となる今回は、『ボーナス点』が追加されて新たな盛り上がりを見せた、2015年リリースの『精密採点DX-G』にフォーカスを当て、話を聞いた。
(前後編の後編。前編を読む)
プロフィール
橘 聡
矢吹 豪
見えるガイドメロディーもよりわかりやすくブラッシュアップ
──総合得点の計算方法やボーナス点以外にも、何か新しくブラッシュアップしているところはありますか?
橘:見えるガイドメロディーも変えていますね。精密採点DXで見えるガイドメロディーで音程が合っているからと得点を期待していたら、思ったよりも低かった。次に違う曲で歌った時、同じように音程が合っているのに今度は90点以上が出た。歌っている最中の見た目は同じなのに、なぜこんなに得点が違うのか? という疑問が社内からもあがっていました。
それで、精密採点DX-Gでは見えるガイドメロディーと採点結果画面の音程正確率の相違がないように調整して、見えるガイドメロディーは音程がはずれた時に赤く塗られるように変えています。
矢吹:精密採点DXの時も赤くしようとしていたのですが、悪いところを強調されてしまうような印象もあって、当時はしていなかったんですよね。でも、どこが間違っているのかよりわかりやすくしてほしいという要望もあったので、今回から取り入れています。
——確かにどこの音程がはずれているかがわかると、とても便利ですし、そこが知りたいというカラオケファンの気持ちもよくわかりますね。
矢吹:そうなんです。ちなみに、歌唱中にリアルタイムでしゃくりなど技法がカウントされるようになったのも、精密採点DX-Gからですね。
──なるほど。精密採点が歌の練習にも最適なツールだということがよくわかるお話です。
採点にとらわれず、より自由な選曲が可能に
──歌唱の上手さと点数が一致し始めたのが精密採点DXで、精密採点DX-Gでさらに磨きがかかった。世間の人たちから見ても納得感が増したように感じますね。
矢吹:今まで95点だった人がボーナス点によって97点になる、その納得感はありました。テレビのカラオケ番組を観ていても、歌唱自体が本当に上手で得点も高いという方が増えてきて、ネガティブな感じの番組はなかったと思います。
──2010年以前は真面目に歌うというより、少し意地悪な番組と言いますか、「こう歌うと点数が上がるよ」といった番組がありましたけど、それが一掃されましたよね。
矢吹:できなくなったんでしょうね。不自然な抑揚やビブラートは加点させないといった対策もしていましたから。以前は、マイクを過剰に動かせば点数が稼げるという攻略法があったのですが、精密採点DX-Gではマイクを動かしているのがわかっちゃうんですよね。
橘:真っ直ぐな歌い方や元気な歌い方、味のある歌い方などさまざまな歌い方で戦い、高得点で競り合う。それがテレビの番組内で起きてきました。いろいろなバリエーションの楽曲が歌えるので、番組的にも華やかになりますよね。
カラオケボックスでもそういった現象が起きていて、場が華やかになった。これまで精密採点の時には高い点数が出やすい楽曲を選んでいたかもしれないけど、多くの楽曲で妥当な点数が出るようになり、楽曲をより自由に選べるようになったと思います。
──採点ゲームに合わせるのではなく、カラオケ自体を楽しんでもらいたい、好きな歌を歌ってもらいたい、その狙い通りになっていますね。
恋が加速する?精密採点DXデュエットも誕生!
橘:もっと採点の可能性を広げたいと思い、精密採点DX-Gと同時に『精密採点DXデュエット』もリリースしています。精密採点シリーズはいわば自分との戦いですが、精密採点DXデュエットは2人一緒に課題曲を決めて歌ってもらうものですね。
2人にもっと先に進んでもらうにはカラオケってすごくいいきっかけだと思うので、より仲よくなってもらいたいという想いでつくったところがあります。
矢吹:「もっと先に」って、カラオケをきっかけに、恋が進んでほしいってこと?(笑)
橘:そう(笑)
——(笑)
橘:でもそれ以外にも、誰かとハモって歌う楽しさを知ってもらいたかったんです。最近はインターネットで「ハモリ」を検索すると、ハモリパートだけを聞くことができる動画も増えてきて、ハモリを練習する環境は整いつつあります。ぜひ、挑戦してみてください。
矢吹:そういえば、精密採点DXデュエットには、総合得点の他に、2人のデュエット相性度っていう採点項目もありましたよね。
橘:はい。デュエット相性度はマイク1とマイク2の内部的な総合得点の差分が少ないほど高い数値が出る仕組みで、最大値は10です。例えば、83点と84点の場合、差分は1点なので、デュエット相性度は9と出ます。
──デュエット採点ということで、何か技術的に苦労されたところはありますか?
橘:『採点リファレンス』という採点の基準となるものがあるのですが、通常だと、採点リファレンスは1つしかないんですよね。それがデュエットの場合、2人の採点リファレンスを分ける必要があって、楽曲ごとに新たに採点リファレンスをつくる必要がありました。作業量が多く、人的リソースも使うのでそこは苦労したところですね。
あとは『見えるガイドメロディー』をどう見せるか。1つの楽譜のなかに2人分のパートを出すのか、分けて出すのか。実際にプログラムをつくって使ってみて、どれが使いやすいのかと比較していましたね。最終的に、2人で歌うパートでは色分けした2つの音程バーを出すようにしました。
──精密採点DX-Gも、精密採点DXデュエットも、たいへん充実した内容ですが、開発担当として大きな達成感はありましたか?
橘:やり切った感はありました。ただ、ひとつの限界というか、ゴールは遠いまま、それどころかさらに遠くなってしまったのに、機械で行う採点の終着点に到達しちゃったという感慨も大きかったです。だから、次に何かやるのであれば、まったく新しい採点を考えなきゃいけないと思っていました。
矢吹:この時はまだAIで採点をやるなんて考えもしてなかったですよね。
——おっと! AIというキーワードが出たところで、今回はここまでとさせてください! 次回は、2019年にリリースされた今も大活躍中の精密採点Aiについてお伺いできればと思います。本日はありがとうございました!
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